土地を相続したら税金はいくらかかる?計算例を元に費用の詳細を解説
最終更新日: 2024-11-25
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「土地を相続したけど、相続税はどれぐらいかかる?」と心配に感じる方は多いでしょう。相続税の計算方法や、控除・特例の適用条件は複雑で、初めて土地を相続する人は不安が大きいはずです。
本記事では、土地の相続税の計算方法から、控除・特例の利用方法まで、分かりやすく解説します。
相続税の仕組みを理解し、余計な税負担を避ける具体的な方法を知ることで、相続手続きをスムーズに進めましょう。
土地の相続で相続税がかからないケース
土地を相続した際に、必ず相続税が発生するわけではありません。
相続税は、被相続人(亡くなった方)から相続した遺産にかかる税金ですが、この財産にかかる税金には基礎控除があります。
基礎控除額は以下の計算式になります。
基礎控除額=3000万円+法定相続人の人数×600万円
例えば、法定相続人が配偶者1人、子供2人の場合、遺産総額が4800万円までは相続税がかかりません。
また、基礎控除以外にも「配偶者控除」「贈与税率控除」などの控除や特例があり、それを使用することで相続税が発生しなくなるケースもあります。具体的な控除に関しては『土地を相続した際に使える控除や特例について』をご覧ください。
相続税の計算方法
相続税の計算方法は複雑ですが、基本的な流れは課税遺産総額を計算し、それをもとに相続税額を計算することで相続税が把握できます。
課税遺産相続を計算
課税遺産総額とは、遺産の総額から基礎控除額を引いた残りの金額のことです。
遺産には、現金や預貯金、不動産、株式などが含まれ、これらの合計額を計算します。
例えば、総遺産額が1億円で相続人が配偶者1人と子供2人の3人の場合、以下の計算になります。
基礎控除額:3000万円+600万円 × 3人=4800万円
課税遺産総額:8000万円ー4800万円=3,200万円
この3,200万円が相続税の対象となります。
なお、相続開始前3年以内に受けた贈与も相続財産に含まれるため、忘れずに加える必要があります。
相続税額を計算
次に、課税遺産総額を相続する人で分割し、その分割したあとの金額に対して相続税額を計算します。
相続税は累進課税方式であり、課税遺産額に応じて税率が上昇します。
具体的な税率は以下の表のとおりです。
課税遺産額 | 税率 | 控除額 |
1000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
法定相続人ごとに計算して合計したものが相続税の合計になります。
先ほどの例ですと課税遺産総額3,200万円は配偶者に1,600万円、子2人に各800万円となります。
この法定相続額に対する税金は次のとおりです。
配偶者:1,600万円 × 15% - 50万円 = 190万円
子:800万円 × 10% = 80万円
したがって、相続税の合計は190万円 + 80万円 + 80万円 = 350万円となり、これが相続税として支払うべき金額となります。
しかし、のちほど紹介する控除や特例を利用することで、最終的な負担を軽減することが可能です。
土地の相続税評価額の計算方法
土地を相続した際に最も重要なのが、土地の相続税評価額を正確に計算することです。
この評価額を間違えると、税額も大きく変わってしまうため、慎重に確認する必要があります。
相続税評価額について
土地の相続税評価額は「路線価」もしくは「倍率方式」で算出されます。
路線価は国が定めた公示地価や市場価格とは異なり、国税局の基準にもとづく価格です。
一般的に路線価は公示価格の8割程度に設定されています。
例えば、土地の路線価が20万円で、面積が100平方メートルの場合、相続税評価額は20万円×100平方メートル=2,000万円となります。
路線価がある地域では路線価で評価、路線価がない地域では倍率方式で評価するとされています。
市街地などの地域は地価が変動しやすいため路線価を設定し、地価が変動しにくい地域は倍率地域に設定されています。
倍率方式で算出する場合
倍率方式で算出する場合は、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて算出されます。
例えば、固定資産税評価額が1,000万円で、その地域の倍率が1.1倍と設定されている場合、相続税評価額は1,000万円×1.1=1,100万円となります。なお、地域ごとの倍率は国税庁のホームページで確認できます。
(確認ページ)財産評価基準書 路線価図・評価倍率表
土地を相続した際に使える控除や特例について
相続税は高額になることが多いため、税負担を軽減するための控除や特例制度をしっかり活用することが重要です。
以下に土地を相続した際に利用できる代表的な控除と特例を紹介します。
贈与税額控除
贈与税額控除は、相続税の計算をする際に、すでに支払っている贈与税分を差し引く控除の事です。
なぜこんな控除があるのかというと、一定の条件を満たす生前贈与は相続時に相続財産として足し戻す制度があるからです。
贈与には「暦年贈与」と「相続時精算課税」の2種類の方法があります。
「暦年贈与」の場合は、相続発生から7年間さかのぼり、相続財産として足し戻す必要があります。
「相続時精算課税」は、基礎控除分の贈与税が非課税となる代わりに、相続時に贈与分を相続財産としてすべて足し戻す必要があります。
このため、すでに贈与税を支払っている財産も課税対象となってしまうため、二重課税を避けるために「贈与税額控除」として控除する仕組みがあります。
配偶者が遺産を相続する場合には、非常に有利な税額軽減措置が設けられています。
この「配偶者の税額軽減」は、配偶者の生活を守るための制度で、相続税を大幅に減らすことができます。
具体的には、配偶者が相続する財産のうち、1億6,000万円までは相続税がかかりません。
例えば、遺産総額が3億円で、配偶者がその半分である1億5,000万円を相続する場合、相続税はかかりません。
もし1億8,000万円を相続した場合は、1億6,000万円を超える2,000万円に対してのみ税金がかかります。
適用を受けるためには、相続税の申告が必要であり、申告を怠ると軽減措置が無効となるため、注意が必要です。
未成年者控除
相続人が未成年者の場合、「未成年者控除」を受けることができます。
相続人が18歳未満である場合に、年齢に応じた金額を相続税から差し引く制度です。
具体的には、未成年者1人につき「18歳までの年数×10万円」が控除額となります。
例えば、15歳の相続人であれば、18歳までの3年間に対して「3年×10万円=30万円」が控除されます。
また、相続税額より未成年者控除額が大きい場合、差し引けない分を扶養義務者の相続税から差し引くことができます。
相次相続控除
相次相続控除とは、10年以内に相次いで相続が発生した場合に、相続税の負担軽減する特例です。
これは、短期間に複数の相続が発生した際に、相続税の累積が重くならないよう配慮された制度です。
一例ですが、祖父から遺産を相続した父が祖父の死後10年以内に亡くなった場合、祖父から相続時の相続税の一定部分が控除されます。
この控除は10年間の期間設定があり、100%から1年につき10%減少していきます。
2年経っていると80%(10年ー2年)、7年で30%(10年-7年)、10年で0%(10年ー10年)となって控除がなくなります。
障害者控除
相続人が障害者の場合、その相続税を軽減する障害者控除が受けられます。
この控除は、障害を持つ相続人が生活を安定させるために、相続税の負担を減らすための制度です。
具体的には、85歳までの年数に応じて控除額が決まり、「85歳までの年数×10万円」が相続税額から差し引かれます。
例えば、50歳の障害者が相続人の場合、「85歳までの35年間×10万円=350万円」が控除額となります。
もし特別障害者である場合は、控除額がさらに大きくなり、「85歳までの年数×20万円」となります。
また、相続税額より障害者控除額が大きい場合、差し引けない分を扶養義務者の相続税から差し引くことができます。
相続税の納税・申告の期間は?
それでは実際に土地の相続にともなう相続税の申告および納税について紹介します。
これを怠ると、延滞税や加算税が発生するおそれがあります。
ただ、遺産にかかる基礎控除額の範囲内(相続税が発生しない)であれば申告も納税も必要ないこともお伝えしておきます。
相続税の申告方法
相続税の申告は、相続財産の詳細を記載した「相続税申告書」を作成して、所轄の税務署に提出することでおこないます。
申告書には、相続人や被相続人の基本情報、財産の種類ごとの評価額、相続分に応じた遺産分割の内容、そして控除や特例を適用した最終的な税額を記載します。
作成時には、相続財産のすべてを正確に評価し、漏れがないようにする必要があります。
不動産の場合は、路線価や倍率方式による評価、金融資産や株式の場合は時価での評価が求められます。
これらを正確に反映させたうえで、基礎控除や特例を適用し、最終的な相続税額を算出します。
申告内容に誤りがあると、のちに修正申告や加算税の支払いなどが起きる可能性があるため、税理士など専門家に相談して作成するとよいでしょう。
相続税の申告期限
相続税の申告・納税期限は、相続の開始を知った日から10か月以内です。
相続の開始とは、被相続人が亡くなった日を指します。
この期限を過ぎてしまうと、延滞税や無申告加算税が発生するため、注意が必要です。
特に、相続人同士で遺産分割協議が長引いてしまった場合でも、申告期限の延長は原則認められません。
そのため、遺産分割協議がまとまらない場合でも、分割前に申告をおこない、のちに修正申告をおこなうなどの対応が必要です。
相続税の納税期限
納税は原則現金一括でおこないますが、納税資金がすぐに用意できない場合には、延納や物納の制度を利用することが可能です。
延納は、現金での分割払いを認める制度で、一定の条件を満たすことで認められます。
一方、物納は、相続財産そのものを納税に充てる制度で、特に不動産が多い場合には有効です。
ただし、どちらの制度も厳しい条件があるため、早めの準備と確認、手続きをおこないましょう。
まとめ
土地の相続にともなう相続税は、しっかりと理解していないと、想像以上の税負担が発生することがあります。
しかし、基礎控除や各種控除、特例を活用することで、相続税の負担を大きく減らすことができます。
また、相続税の計算方法や土地の評価額の算出方法は複雑であるため、専門的な知識が必要となる場合が多いです。
相続手続きをスムーズに進め、無駄な税金を支払わないためにも、早めの準備と適切な申告が重要です。
税理士や弁護士などの専門家に相談し、計画的に相続を進めることをおすすめします。