住宅ローン返済中の家は売れる?売却の流れを解説
最終更新日: 2024-11-25
- もくじ
住宅ローンが残っている家を売る際に知っておきたい重要ポイントを解説するとともに、住み替えや離婚に伴う売却の手順や費用、資金計画についても説明します。
ローン返済中の家を売る2つの条件
家を購入した際、多くの方が住宅ローンを利用しているため、ローン返済中に家を売ることは珍しいことではありません。
しかし、ローンが残っている家を売る場合、単に売りたいという意志だけでは進められない手続きがいくつかあります。
特に重要なのは、「住宅ローンの完済」と「抵当権の抹消」の2つです。
これらをしっかり理解しないまま進めると、売却がスムーズに行かない可能性があります。
1.住宅ローンを完済すること
住宅ローンを完済することは、家を売却する際の最も大切なプロセスです。
一般的に、家を購入する際に借りた住宅ローンは、その家自体を担保にしています。
つまり、ローンが残っている限り、その家には銀行や金融機関の権利がかかっているのです。
家を自由に売却するためには、まずこの住宅ローンを完済する必要があります。
住宅ローン完済の方法は、大きく分けて2つあります。
1つ目は、家の売却によって得られた資金でローンを全額返済する方法です。
多くのケースでは、家の売却価格がローンの残債を上回ることで、売却時に完済が可能となります。
この場合、売却による収入で残債を完済し、家を売却することができます。
しかし、家の価値がローンの残高を下回る場合、「オーバーローン」と呼ばれる状況が発生します。
オーバーローン
オーバーローンとは、家の売却価格が住宅ローンの残債を下回る状態のことです。
この場合、売却してもローンを完済できないため、追加の自己資金を投入するか、金融機関と交渉する必要があります。
アンダーローン
アンダーローンは、家の売却価格が住宅ローンの残債を上回る状態です。
この場合、売却後にローンを完済できるだけでなく、手元に資金が残るため、売却プロセスがスムーズに進む可能性が高いです。
住宅ローンの種類について
次に考慮すべき点は、住宅ローンの種類です。
たとえば、変動金利型のローンを利用している場合、金利の変動によって残債が増減することがあります。
このため、完済に必要な金額を計算する際は、金利の影響を十分に考慮する必要があります。
また、金融機関によっては、完済時に手数料や違約金が発生することもあるため、事前に確認しておくことも大切です。
2.抵当権を抹消すること
住宅ローン完済後の重要な手続きが抵当権の抹消です。
抵当権とは、住宅ローンを組む際に金融機関がその家に対して設定する権利であり、ローンが返済されない場合には金融機関がその家を売却することで債務を回収できるというものです。
つまり、住宅ローンを完済しない限り、抵当権は家に残り続けるのです。
抵当権を抹消するには、住宅ローンを完済した後に金融機関から「抵当権解除証書」などの必要書類を受け取る必要があります。
これらの書類をもとに、法務局で抵当権抹消の手続きを行います。
手続き自体はそれほど複雑ではなく、必要な書類と手数料を支払うことで比較的短期間で抹消が完了します。
抵当権が残ったままでは、家を購入する側が安心して買うことができず、売買契約が成立しないこともあります。
住宅ローン返済中の家を売る流れ
住宅ローン返済中に家を売却する場合、通常の売却プロセスに加えて、いくつか特別な手続きが必要です。
まず、住宅ローンの残債がどれくらいあるのかを確認し、その残債を売却金額で返済できるかをシミュレーションします。
ローンの残高が売却価格を超える「アンダーローン」や、逆に残債が売却価格を下回る「オーバーローン」などのシナリオに応じて、対応方法が変わります。
住宅ローンの残債を確認する
まずは現在のローン残高を正確に把握しましょう。
これは売却の成否を左右する重要なポイントです。
残債の確認方法は、一般的に金融機関に直接問い合わせるか、インターネットバンキングを利用して確認します。
また、ローン返済明細書にも残債額が記載されていますので、こちらを確認することも可能です。
なお、金融機関によっては、ローンの繰り上げ返済に手数料が発生することがあります。
家の売却価格を調べる
次は売却価格を調査します。
売却価格を把握することで、住宅ローンの残債をどの程度カバーできるかがわかり、売却の可否や手取り額が明確になります。
売却価格の算定は、売却全体の成功に直結するため、正確な情報に基づいて判断することが必要です。
まず、インターネット上の不動産ポータルサイトを利用して、同じ地域や類似した条件の物件の売却価格を確認します。
これにより、おおよその市場価格の相場がつかめます。
ただし、インターネット上の情報はあくまで参考価格であり、実際の取引価格とは異なる場合があるため、あくまで参考程度にしてください。
より正確な売却価格を把握するためには、不動産業者に依頼して査定を受けることが推奨されます。
実際に完済できるかシミュレーションする
実際に売却後にローンを完済できるかどうかをシミュレーションしましょう。
まずは、売却価格から諸費用を差し引いた「手取り額」を算出します。
諸費用には、不動産仲介手数料や登記費用、税金などが含まれます。
これらの費用は物件の売却価格に対して一定の割合でかかるため、あらかじめ計算しておくことが大切です。
手取り額が住宅ローンの残債を上回る場合、ローンを完済でき、残った資金を次の家の購入や引っ越し費用に充てることができます。
オーバーローンの家を売る場合
オーバーローンの状態で家を売却する場合、通常の売却プロセスに加えて、いくつかの選択肢と注意点があります。
売却する前に「売り先行」か「買い先行」を選び、場合によっては「任意売却」を検討する必要も出てきます。
売り先行・買い先行のどちらかを選ぶ
オーバーローンの家を売却する場合、次に住む家をどう確保するかが重要な課題になります。
このとき、一般的には「売り先行」と「買い先行」という2つの選択肢があります。
売り先行
「売り先行」とは、今の家を先に売却し、その後に新しい住まいを購入する方法です。
この方法は、売却価格が確定してから次のステップに進めるため、資金計画が立てやすい点がメリットです。
買い先行
一方、「買い先行」とは、新しい家を先に購入してから、現在の家を売却する方法です。
住む場所が確保された状態で売却するため、引っ越しや生活のスケジュールを調整しやすいでしょう。
ただし、オーバーローンの場合、現在のローンの返済がまだ完了していない段階で新しい住宅ローンを組む必要があるため、資金のやりくりやローン審査が厳しくなることがあります。
アンダーローンの家を売る場合
アンダーローンとは、家の売却価格が住宅ローンの残債を上回る状態のことです。
この状況は、売却後にローンを完済でき、さらに手元に資金が残る可能性が高いため、オーバーローンよりも有利です。
ただし、アンダーローンでも売却にかかる費用を考慮する必要があり、売却活動をスムーズに進めるためには計画的な準備が必要となります。
売却費用を計算する
アンダーローンの家を売却する際には、まず売却にかかる費用を正確に把握することが重要です。
売却価格がローンの残債を上回っている場合でも、売却に伴う各種費用が発生するため、これらの費用を差し引いた後の手取り額を正確に計算しておく必要があります。
主な売却費用には、不動産仲介手数料、登記費用、引っ越し費用、そして税金などがあり、これらの費用は物件の価格や契約条件によって異なるため、売却を進める前にしっかりと確認しておきましょう。
不動産仲介手数料
不動産業者を通じて家を売却する場合、仲介手数料が発生します。
日本では通常、仲介手数料は「売却価格×3%+6万円+消費税」という計算式で算出されます。
例えば、家の売却価格が3,000万円の場合、仲介手数料は約105万円(消費税込み)となります。
この手数料は売却後に支払うことになるため、事前に予算に含めておくことが大切です。
登記費用
売却時には、所有権移転や抵当権抹消にかかる登記費用が発生します。
司法書士に依頼して手続きを行いますが、その際の報酬や手数料も含まれるため、登記にかかる総額を事前に確認しておきましょう。
引っ越し費用
売却後には新しい住まいに移るための引っ越し費用が必要です。
特に、大型家具や長距離の引っ越しを伴う場合には、費用が高くなることがあります。
これも売却費用の一部として計算に含めておくべきです。
税金(譲渡所得税など)
家を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が発生することがあります。
譲渡所得税は、売却価格から購入時の費用やリフォーム代、売却費用を差し引いた額に対して課税されます。
一定の条件を満たせば特別控除が適用されることもありますが、詳細は税理士に相談するのがよいでしょう。
このように、売却費用を正確に計算しておくことで、売却後に手元に残る資金を正確に見積もり、新たな住まいの購入資金や生活設計に役立てることができます。
売却の場合
アンダーローンの状態で家を売却する場合、残債を完済した後に手元に資金が残る可能性が高く、売却が比較的スムーズに進む傾向があります。しかし、売却の際にはいくつかの注意点があります。
まず、売却後に手にする手取り額を最大化するために、適正な売却価格を設定することが必要になります。
不動産市場の動向や同じエリアの売買事例を参考にしながら、適切な価格を決めることが売却の成功に直結します。
高すぎる価格設定は買い手を遠ざける可能性があるため、信頼できる不動産業者と相談しながら適切な価格を設定しましょう。
さらに、売却活動を始める前に、住宅の状態を確認し、必要な修繕やクリーニングを行うことも大切です。
家を魅力的に見せるためのリフォームや、購入希望者が安心して契約できるようにするための設備チェックは、売却価格を引き上げる要素になります。
売却後の資金については、次の住まいの購入や生活費に充てることが一般的ですが、事前に計画を立てておくことが成功の鍵となります。
購入の場合
アンダーローンの家を売却して新しい家を購入する場合、売却益を次の住まいの購入資金として活用することができます。
これは非常に有利な条件であり、特に新しい住宅ローンの頭金として使うことで、ローンの負担を軽減できる点が大きなメリットです。
購入に際しては、まず現在の家の売却額から手取り金額を算出し、その資金を次の家の購入計画に組み込みます。
頭金を多く用意できれば、借り入れる住宅ローンの金額が減り、毎月の返済負担が軽減されます。
また、住宅ローン審査の際にも、自己資金が多ければ審査が通りやすくなるという利点があります。
次に購入する家の価格や条件を慎重に選び、無理のない返済計画を立てることが重要です。
アンダーローンで得た利益を効果的に活用し、次の住まいでも快適に暮らせるように資金計画をしっかりと立てておきましょう。
また、購入時には不動産取得税や登記費用、引っ越し費用などが新たに発生するため、それらも考慮した予算設定が必要です。
これらの費用を計算に入れておくことで、無理のない購入を実現しやすくなります。
売却活動を始める
アンダーローンの家を売却する際には、売却活動を適切に進めることが成功のカギとなります。
まず、信頼できる不動産業者を選び、適切な査定を受けることを意識しましょう。
査定を通じて、現在の市場での売却価格を正確に把握し、その価格に基づいて売却活動を進めていきます。
売却活動は主に、物件の魅力を最大限に引き出すためのプロモーションが鍵となります。
不動産業者と連携して、家の写真をプロのカメラマンに依頼したり、内覧会を開催したりすることで、買い手の関心を引くことが最も重要です。
特にオンラインの物件紹介では、写真や間取り図を活用した魅力的なページ作りが欠かせません。
また、売却を急ぐ場合は価格を調整する必要がありますが、焦って値下げをするのではなく、市場の動向を見ながら適切なタイミングで価格設定を変更することがポイントです。
価格設定は売却のスピードに大きく影響するため、バランスを見極めながら進めましょう。
売却活動の成功には、買い手との交渉力も求められます。
購入希望者からのオファーがあった場合、価格交渉や条件交渉をしっかりと行い、双方が納得できる形で契約を成立させることが求められます。
売却を急がず、じっくりと適正な価格で売却できるよう計画を立て、準備を進めていくことが成功への道となります。
住宅ローン返済中の住み替えや離婚した場合の注意点
住宅ローン返済中に、住み替えや離婚などのライフイベントが発生した場合、家を売却することを検討する方が多いです。
しかし、ローンが残っている状態での売却には、いくつかの重要な注意点があります。
離婚の場合は財産分与やローンの扱い、住み替えの場合は新しい住居への資金計画を行なうことが鍵となります。
離婚よる売却の注意点
離婚によって共同所有の家を売却する際には、特に慎重な対応が必要です。
住宅ローンが残っている場合、売却することで得た資金でローンを完済することが一般的ですが、売却方法や残債の処理について、しっかりと理解しておきましょう。
財産分与と家の所有権
離婚時における家の売却は、財産分与に直結します。
夫婦が共同で住宅ローンを組んでいる場合、家は共有財産と見なされるため、売却後の収益は夫婦で分割することが必要です。
財産分与の割合については、事前に協議を行い、双方が合意する形で決めるのが理想です。
特に、住宅ローンの名義がどちらか一方に限られている場合は、その負担がどう分担されるかを明確にしておく必要があります。
住宅ローンの残債確認
離婚による家の売却では、まず住宅ローンの残債を確認することが重要です。
売却価格が残債を上回る場合、売却収益でローンを完済し、残りを財産分与に充てることができます。
しかし、売却価格がローンの残債を下回る「オーバーローン」の場合、自己資金を追加してローンを完済するか、売却後も残債の返済を続ける必要があります。
このような場合、双方の負担をどう分けるか、しっかりと話し合いを行うことが求められます。
名義変更や手続きの負担
離婚によってどちらか一方が家を所有し続ける場合は、住宅ローンの名義変更や所有権の移転手続きが必要になります。
しかし、住宅ローンの名義変更は、金融機関の審査を通過しなければならず、必ずしも簡単ではありません。
例えば、一方がローンを引き継ぐ場合、その人の収入や信用状況によっては審査が通らないケースもあります。
名義変更をする際は、事前に金融機関としっかり相談し、手続きを進める必要があります。
不動産の評価額と売却計画
離婚に伴って家を売却する際には、適正な価格で売却することが重要です。
過去の売却事例や市場の動向を参考に、適正な売却価格を設定しましょう。
正確な査定を受けることが、スムーズな売却につながります。
税金の扱い
離婚による家の売却でも、譲渡所得税が発生する可能性があります。
ただし、居住用財産の譲渡所得には3,000万円の特別控除が適用されることが多いため、税金の負担を軽減できる可能性があります。
具体的な税金の計算や控除の適用については、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
住み替えによる売却の注意点
住宅ローン返済中に住み替えを検討する場合、現在の家を売却して次の住まいを購入することになります。
住み替えには、資金計画の見直しや、売却と購入のタイミング調整が重要なポイントです。
現在の家の売却価格と残債の確認
住み替えを進める際には、まず現在の家の売却価格を正確に把握することが大切です。
不動産業者に査定を依頼し、現在の市場価格を確認しましょう。
同時に、住宅ローンの残債も確認し、売却価格でローンを完済できるかをシミュレーションします。
アンダーローンの状態であれば、売却後に残った資金を新居購入の頭金に充てることが可能です。
しかし、オーバーローンの場合は、自己資金の追加や任意売却などの対策が必要となる場合があります。
売却と購入のタイミング調整
住み替えの際には、現在の家を売却するタイミングと新しい家を購入するタイミングを上手に調整することが大切になります。
一般的には「売り先行」か「買い先行」のどちらかを選ぶ必要があります。
売り先行では、現在の家を先に売却してから新しい家を購入するため、資金計画が立てやすいという利点がありますが、売却後に仮住まいが必要になる可能性があるため、その点も考慮する必要があります。
一方、買い先行では新しい家を先に購入してから現在の家を売却するため、住む場所が確保される安心感がありますが、二重ローンのリスクが生じる可能性があります。
どちらの方法を選ぶかは、資金状況や市場動向によって判断しましょう。
住み替えにかかる費用の計算
住み替えには、売却と購入に伴うさまざまな費用が発生します。
まず、売却時には不動産仲介手数料や登記費用、譲渡所得税がかかる場合があります。
さらに、引っ越し費用や新しい家の購入にかかる登記費用、住宅ローンの手数料なども必要です。
これらの費用を計算に入れて、無理のない資金計画を立てることが求められます。
住宅ローンの審査
新しい家を購入する際には、新たな住宅ローンの審査が必要です。
現在のローンが残っている状態で次の家を購入する場合、金融機関の審査は厳しくなることがあります。
特に、二重ローンとなる場合は、収入や返済能力を厳しくチェックされるため、事前にシミュレーションを行い、無理のないローン計画を立てることが求められます。
まとめ
住宅ローン返済中に家を売却する場合、ローンの残債や売却価格、手続きにかかる費用など、しっかりと計画を立てて進めることが重要です。
離婚や住み替えに伴う売却では、特にタイミングや財産分与、資金計画に注意が必要です。
どの状況においても、専門家と相談しながら慎重に進めることで、スムーズな売却と今後の生活設計が実現できます。
売却の際は、しっかりと準備をして最善の選択をしましょう。